「子供の生活15年変化」調査レポート
博報堂生活総合研究所は、5年前(2007年)と15年前(1997年)に行った、小学4年生〜中学2年生対象の「子供調査」を、本年(2012年)同世代の子供たちに行った。前回の2007年から2012年の間には、次のような、それまで経験したことのない大きな出来事があった。
①2008年:リーマンショック
②2009年:民主党への政権交代
③2010年:GDPで日本が中国に抜かれ、世界第3位へ
④2011年:東日本大震災
これらの出来事が、直接的、間接的に子供たちに与えたであろう影響を念頭に置きながら、1997年から2002年までの2000年前後に生まれた子供たち「アラウンド・ゼロ世代」の特徴を15年間の生活変化から8つの特徴として、明らかにした。
◆2000年前後に生まれた「アラウンド・ゼロ世代」の8つの特徴
<家族との関係>
1.「自分の世界」より「家族と一緒」。家族との親密さが増している。
2.「友達」よりも「家族」。家族の求心力が高まっている。
※家の中での居場所としては、「自分の部屋」がこの5年間で大幅に減少し(32.3% ⇒ 17.3%)、「居間」が大幅に増加した(56.4% ⇒ 76.2%)。子供たちは自分の世界を確保することよりも、家族と一緒にいて安心できることを求めている傾向が顕著に認められる。
また、「家族と友達の大切さ」の比較においても、「家族の方が大切」と答える子供たちがここ5年間で増加している(79.7% ⇒
86.1%)。
<友達との関係>
3.友達との関係性は以前よりややドライに。
4.コミュニケーションツールは「深さ」から「広さ」へ。メールは減って、SNS への関心高まる。
※1997年から2007年にかけて大幅に上昇(39.2% ⇒ 48.1%)していた「友達への関心」が減少傾向を示した(40.3%)。メールについては、どうやら5年前ほど活発ではないようで、「携帯電話やパソコンでメールのやりとりをする友人がいる」割合はかなり減少している(60.4% ⇒ 48.3%)。その代り、SNSやアバターを実際に利用している子供は増加し(13.8% ⇒ 18.5%)、リアルな関係を深めることからバーチャルな関係を広める方に関心が移っている傾向が認められる。
<生活圏>
5.学びの場:学校を楽しむ傾向が高まるなか、塾に通う子供は減少。
6.遊びの場:「ゲームセンター」より「テレビゲーム」。遊びの場は「家の中」志向が増加。
※遠足、音楽会、学芸会、マラソン大会などの学校行事を「楽しい」と思う子供の割合は、1997年から2007年にかけては減少または微増だったが、今回の調査では全ての項目で増加に転じた。一方、「塾」に関しては、初めて「一度も通ったことがない(45.4%)」が「通っている(40.8%)」を上回った。
また、「遊び場」についても「外より家」にシフトしている傾向が認められ、自宅以外でよく遊ぶ場所として「ゲームセンター」はかなり減少傾向を示した(23.4% ⇒ 19.2%)。
<その他>
7.東日本大震災が身近な関係の大切さを痛感させている
8.激動の時代を過ごす中でも、子供たちの幸せ実感は増加している
※東日本大震災後に自分の考え方や行動が「変わったと感じることがある」と答えた子供の割合は約半数の47%だった。性別では「女子」の方が、学年別では「中学生」が自分の変化が大きいと感じている結果となった。総じて、大震災を経て家族やまわりの人たちとの「絆」を大切にする気持ちが高まっている。
また、東日本大震災だけでなく、リーマンショックによる経済環境の激変や、将来不安の蔓延する現代にあっても、1997年~2012年にかけて「幸せな方だと思う」が77.6% ⇒ 88.6%へ増加、「楽しい生活を送っている」が90.5% ⇒ 93.8% へと増加傾向を示した。
激変する時代のなかにあっても、自分たちの「幸せ」や「楽しさ」を柔軟に見つけ出す子どもたち姿が見て取れる。
この激変の5年間、子供たちは経済環境・社会変化のなかを生きる親や身近な大人たちの姿を見たり、世の中の不穏さを感じたりしつつ生きてきたでしょうし、子供ながらに心のどこかに常に不安や気がかりな気持ちを抱えながら過ごしてきたのでしょう。
東日本大震災後の復興についてもメドが立っていません。いじめによる自殺だとか同年代の子の悲惨な現実も見聞きしています。政治・経済不安も感じていることでしょう。
今回の調査結果を見ましても、子供たちは本能的に自分の生きる時代を見極め、自分を守るために、身近な人や場所に重心をシフトし、より身の周りの関係性を強化することで時代の荒波を乗り越えようとしていると思われます。
投稿日:2012/09/26